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第78回 使徒パウロの宣教 その41

レポート

2021年12月14日に第78回ヨシェルの会が開催されました。出席者は14名。

コロナ禍がオミクロン株のフェーズに入ろうと、不気味に静かに忍び寄るかの様な日々が、続いています。落ち着きを取り戻しつつも、更なる何かが待ち受けている不安も消せません。そんな中にいるからこそ、逆に「希望」や「平安」の力強さを想います。学ぶ聖書箇所は、使徒行伝の「最後」です。パウロの足跡を、嵐の航路を辿ります。囚人として船上に立つパウロの姿勢に、人生の荒波への立ち向かい方を学びます。語られる師と参加/視聴して下さる皆様と主の導きに、只々心から感謝します。

今日のタイトルは「使徒パウロの宣教 その41」。

パウロが、ローマへと向かう船旅を中心に、如何に信頼され、どう困難に向き合ったのかが描かれます。二千年前の船旅。今のような平穏さの保証はどこにもなく、まさに命がけの旅なのだと改めて思わされます。同時に、荒波に揉まれる船旅を、人生と重ね合わせても見てしまいます。そして「使徒行伝」は、何にもはばかることなく宣教し続けるパウロの姿で閉じられます。

約三年半に渡って学んできたパウロの宣教の旅路。そして、聖書だけでは判読できない、パウロの最後、「処刑」についても触れます。毎月一歩ずつ、パウロという人物との距離が縮まった様に勝手に思ってきただけに、余計に淋しさが募ります。

航海(術)に長けた者のみが可能な表現が続きます。記述しているのは、ルカ。四福音書の中でも、時系列に沿って語り、医者らしい論理的な描写力が、ここでも発揮されます。同時に、「とげ」を抱えているパウロが、霊肉魂ともに支えられていることを想像し、心穏やかに読めます。そして、パウロが徐々に周りからの信頼を勝ち得ていく様が、その筆致によってより説得力を増します。特に皆が囚人パウロに「元気を出せ」と叱咤激励される箇所は、普通は有り得ない奇跡のようなシーンですが、自然に読めてしまいます。

ただ神に忠実であろうとするパウロの周りに、本人たちの想いはどうであれ、助け手としてキャスティングされて行くのが伝わってきます。ローマの兵士、囚人たち、土着の人々、そしてマムシや嵐でさえ。神の台本を支える「役」を熱演します。些細なことにさえ、「追い風だ」「向かい風だ」と、一喜一憂してしまう人間の想いを超えたところで、神の計画は進んでいるのかもしれません。

そして旅路の「終り」に到着です。「使徒行伝」自体は、ある意味爽やかに筆が置かれます。でも、私たちは「その後」を知っています(知らされています)。「ペテロがどのような死に方で神の栄光を現すかを示すために…(ヨハネによる福音書21:19)」が頭をかすめます。そして、どの様な「終り方」であれば、この淋しさが軽減されるのかとも考えてしまいました。

物語の多くは「起承転結」をある程度はベースにしながら進みます。でも、それはその物語が「有限」だからなのかもしれません。五十歳の人生の物語であれば、ほぼ五十年分しか物語はありません。でも、もしも「永遠の命」を授かった人が主人公だったなら、その物語はどう終わるのでしょう。いつまでも「結」が来ない物語か、何かが「継続」され続けているモノなのかもしれません。

使徒行伝は「パウロは、まる二年間、自費で借りた家に住み、訪ねて来る人たちをみな迎えて、少しもはばかることなく、また妨げられることもなく、神の国を宣べ伝え、主イエス・キリストのことを教えた」と結ばれます。不幸の影すらないような書きっぷりです。でも、パウロの物語には、「使徒行伝」以降の囚人生活や訴訟問題や処刑などは、蛇足的な付録であり、今もなおパウロは誰はばかることなく教え続けているのだと思えてきます。

「聖書には完結していない物語が多くある」と師は解説されました。そう言えば…と浮かぶ人物が何人かいます。神の憐れみと慈しみの中で、どの様な「完結編」が用意されていたのでしょう。それも含めて、主に見(まみ)えるときに種明しされる驚きの物語に、興味も胸も高鳴ります。

物語は終わったかの様に見えるパウロの歩み、でも歩みは続いています。そんな彼の「同労者」となるには…主が少ないと嘆かれた「働き手」となるには…とも考えさせられます。信仰者にとって大切な警告も示唆もアドバイスも、今回もたくさん語られました。音声動画・資料を通して更に深くお学び下さい。尚、次回は黙示録です、ご期待下さい。

ps. 今回は、解説の後のQ&Aタイムを少しだけ収録しました。

感想

  1. 使徒行伝の最終回に至り、平然と毒蛇を火に振り落とし、また集まって来る病人を癒し、感謝を捧げてパンを裂いたパウロとイエス様が全く一つとなっているように感じられました。神にまるで縛り付けられているかのように走るべき行程を走り終え、人間的にはローマの信徒を案じて会えることを願った結果、囚人として辿り着くことになったパウロ。偉大さゆえにその働きばかりに目がいっていましたが、最後が打ち首だったなんて!3年間エペソで夜昼弟子たちを教え導き、二度と会えないだろう別れを告げた時、弟子たちは声をあげて泣いたとありますが、私も一緒に泣きたい思いになりました。出迎えてくれたローマの兄弟たちに会って、パウロは勇気づけられたとあります。
    講義終了後の参加者の感想でも語られましたが、丁寧なご教示の中で恵みの福音について教えられたことはもちろんですが、人間パウロの喜怒哀楽をも知り、パウロも聖書も近くに感じ読めるようになりました。ご指導に感謝します。次回から始まる黙示録も楽しみです。

  2. 今回の学びではパウロ一行の航海に関して、著者であるルカが詳細に描写していることに驚いています。地図を見ながらペンで航路をたどり、あたかも自分も一緒に乗船しているかのような思いで講義を聴きました。この箇所をこれほどまでに時間をかけて、丁寧に説明してもらったのは初めてでした。記述に基づいての「錨」や「入り江」の発見など、近代のコンピュータ技術の進歩を通して聖書の信憑性が明らかになって来ていることは嬉しいです。 それにしてもパウロの人生は過酷。獄中生活にありながらも常に機会をとらえて神の国の到来・福音を述べ伝えた信仰者の歩みがそこにあり、しかしそのことがそこで終わるのではなく、現代にまで続いているとの解説に目が開かれた思いでした。パウロからのバトン、しっかり受け取って走っているのかどうかが問われています。パウロの獄中書簡、もう一度読み返したいと思いました。続く黙示録の学びも楽しみです。ありがとうございました。

  3. パウロの宣教旅行の最後の27、28章のことがよくわかりました。地図や共鳴装置(いかり)の写真サイトも添付してくださってあり分かりやすかったです。ありがとうございました。

  4. 教会史の全貌が見えました。今後も楽しみになります。期待しています。

  5. 丁寧に語ってくださりありがとうございました。黙示録の学び楽しみです。今の時代と聖書が深く結びついていること、しっかり学びたいです。

  6. 何度か聞いた箇所でしたが、じっくり学ぶことが出来て良かったです。次回からの黙示録の学び、楽しみです。

  7. 先生のメッセージが良く頭に入りました。ありがとうございます。次回も期待しております。

  8. 次回、黙示録、楽しみにしています。